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テロメア:細胞分裂の上限回数を設定
無限の細胞分裂までは叶わない私たち
© NHK 出典:NHK BSプレミアム 『ヒューマニエンス』 「“死” 生命最大の発明」
生物である私たちヒトには23対46本のDNA染色体があります。このDNA染色体の各末端には、ちょうどキャップのように付随している「テロメア※」と呼ばれる領域があります(イメージ内の赤い箇所です)。私たちは細胞分裂を繰り返すことで、自分を自分のまま維持していますが、実は細胞分裂が行なわれるたびにこのDNA染色体のテロメア部分は徐々に短くなっていきます。
ヒトの場合、概ね50回の細胞分裂を繰り返すとこのテロメアが短くなり過ぎてしまい、やがて細胞分裂ができなくなるという仕組みになっています。
※テロメア(telomere)…ギリシャ語の「telos=末端」と「meros=部分」に由来する言葉
細胞分裂の回数が有限だから「老い」が来る
テロメアがあるため、私たちは無限に細胞分裂を繰り返すことができません。これがいわゆる「老い」の正体で、最終的には細胞分裂が滞り、身体のあらゆる箇所(たとえば各内臓器官等)で支障が出て人生の幕を下ろす形になります。
生殖細胞だけは無限に再生可能
生殖細胞(精子や卵子、その大元になる精母細胞や卵母細胞)に限って言えば、実はテロメアを修復する酵素「テロメラーゼ」が活発に働くため、唯一何度でも細胞分裂が可能となっています。ただ、生殖細胞以外の細胞には「テロメラーゼ」が活性化できないようなプログラムがDNA自体に組み込まれているため、細胞分裂を繰り返すたびに「終焉(=死)」へと近づいていく仕組みになっています。
テロメアは「命の回数券」のようなもの
バスなどの回数券のように細胞分裂の回数に上限数が設けられていることから、テロメアの機能を「命の回数券」と表現することも少なくありません。テロメアを修復するような医学的技術は実は既に存在するのですが、これを施してしまうと今度は細胞が「ガン化」してしまうという強烈な「命のルール」があります。このため、私たちはどうあがいても今のところ「終焉(=死)」には抗えないという運命を背負っています。
毛根も同じ 40~50回程度の有効再生可能回数しかない!
ヒトの毛髪について考えた場合も、一つひとつの毛根が再生可能な上限は「40~50回程度」と言われています(髪の毛が抜けた後、またそこから生えて再生させられるのは40~50回程度までだという意味です)。このため、明確に薄くなってからAGA内服治療をスタートさせた場合だと「やや手遅れ」という形になることも少なくありません。
「もう薄くなり始めている…」ということは、DHTの影響を受けて少なからずヘアサイクルを短縮させられている公算が高いです。これは「テロメア」が制御する有効再生可能回数に当てはめた場合、本来以上に早く「命の回数券」が使われてしまっていることを意味します。いざAGA治療を開始した際に「内部的にもうその細胞の回数券はほとんど残っていない…」ということにもなり兼ねません。
毛根レベルで既に再生可能な上限回数を使い切ってしまえば、DHTの産出量を抑制するAGA治療薬がどれだけ強力でも、そもそも毛髪を再生できなくなります。あるいは、ミノキシジル外用薬(発毛剤)で毛細血管の血流を改善しても、生える種が欠損していれば何も育ちません…。
このため、どこのクリニックでも「AGA治療は早期着手が大切です」と言われます。これは「ただ医療機関がお薬を処方して儲けたいから…」ということではなく、本当に遅れれば遅れるほど「毛髪を元気に再生させる力が遺伝子レベルで枯渇してしまう…」ということなのです。
ヘアサイクルでテロメアの制限を分析
生え際後退の放置は非常にリスキー
ヒトの髪の毛の毛周期(ヘアサイクル)について復習してみましょう。既に大部分の読者が目にしたことのある内容だと思いますが、これに「テロメア」が制御する有効再生回数を当てはめて吟味してみると、早期治療の必要性がよく実感できると思います。
健康な人の毛髪のヘアサイクル
ご覧のように、健康的な頭皮環境であれば毛髪1本の成長期は「2~6年程度」と言われています。散髪などでヘアカットしていても髪はそのまま伸び続けますし、成長期がたっぷりとあるのでその髪の毛1本はかなり期間頭皮上に存在し続けます。
また、単純に「成長期」「退行期」「休止期」を合計し、仮に髪の毛1本の発生から脱毛までを「3年」と見積もった場合でも、これが40回繰り返されるのなら120年間は安泰ということになります。
100歳以上になってまでふさふさしている必要は当然ありませんから、これは生涯薄毛に悩む必要はない状況だと言えますね。
ところが、AGAになると本来あるべきヘアサイクルのうち、髪が健やかに育つ「成長期(緑の領域)」が数ヶ月~1年へと短縮させられます。同様にイメージ図で展開すると次のように考えることができます。
AGA発症患者の毛髪のヘアサイクル
「成長期」が極端に短くなってしまうと、そのエリア(おそらく前頭部や頭頂部)の毛根一つひとつがどんどんと「前倒し」で次の再生を押し進めざるを得なくなります。ご覧のような流れで、「命の回数券」を早回しで使用していかざるを得なくなります。40~50回程度しかない回数券なのに、このようにどんどんと使っていけば、未来の頭皮が思いやられますよね…。
仮に発毛から脱毛に至るトータル期間が、DHTの影響により「6ヶ月」程度にまで短縮させられている場合を想定してみましょう。以下のように、20年程度で有効再生可能回数を使い切ってしまいます。
たとえば30歳でDHTが影響し始めるなら、50歳でツルツルになるということになりますね。実際には、DHTは「前頭部」や「頭頂部」に偏って産出される傾向があるため、「M字部分」や「つむじ付近」でのみ地肌の露出が起こり、DHTが産出されにくい後頭部や側頭部などは本来通り毛髪が残るという形になります。
どうでしょうか。このようにシミュレートしてみると、「テロメア」が決定付けている有効再生可能回数については、1回1回をしっかりと全うさせないと非常にもったいないということがわかりますね。
有効再生可能回数を理解していないと「まだ大丈夫…」と言い聞かせてしまう
鏡を見ながら「少なくても今の自分には関係ないな!」と考える男性は少なくないと思います。ただ、毎日この作業を繰り返していると、微細な変化までは捉えられず、薄くなり始めた時期を見逃してしまうかもしれません。
あるいは、社会的に一定程度の職責を負い、結婚してある程度の役職に就くような時期になるとファッションへの関心も減少します。鏡を見る回数自体が減っていく中、ふと前髪をかき上げたとき、以前は余裕だったはずの心持ちがいつの間にか「まだ大丈夫…」という言い聞かせに変わっているような事態にも陥ります。
「毛根再生の上限回数(40~50回)」について知っていれば「早期着手」にも踏み込めますが、多くの方はここまでの知識を持っていません。「AGAになるとヘアサイクルが短縮する。でも治療薬を飲めばブロックできるから復活できる!」と理論派の人ほどこの理屈にすがります。
もちろん理屈は間違っていないのですが、「毛根には有効再生可能回数がある」というルールが欠落しています。このようにして、ついつい治療を先延ばししてしまい、少しずつ「手遅れ」になるリスクを増やしてしまいます。
M字をAGA治療薬で回復できない理由
未来の阻害は過去の修復ではない
プロペシアやフィナステリド、ザガーロなどの「5α還元酵素阻害薬」に分類されるAGA治療薬の効能は、DHTの産出量を抑制するというものです。文字通り「5α還元酵素(リダクターゼ)」を阻害できるため、これにテストステロンが結合してしまうのを防ぎ、DHTの産出が抑え込めます。
DHTは薄毛シグナル発生のきっかけになる脱毛因子ですので、DHTを抑制できればヘアサイクルの短縮は抑制されます。よって、AGA治療薬が効いている環境下では、その頭皮から生える「新しい毛」は健やかに育つ可能性が高くなります(通常通りのヘアサイクルを全うしやすくなります)。
ただし、もう過去にDHTの影響を受けた毛髪そのものを取り戻すことはできません。既に前頭部が薄くなりM字がくっきりと完成しているような状態なら、その剃り込み部分の毛根はある程度上限(40~50回)に近い有効再生可能回数を前倒しして使用してしまっている可能性が高いです。
つまり、後からAGA治療薬でDHTの産出を抑え込み、ようやく健康な土壌(頭皮環境)が整っても、上限回数の細胞分裂が実施されてしまった後では「もう打つ弾が残っていない…」という状態になることもあるのです。「プロペシアやフィナステリドを飲み続けてもM字が良くならない…」という場合は、おそらくこのような状態になっている可能性が高いと判断できるでしょう。
AGA治療薬は「次の芽生え」でDHTの影響を回避するだけ
本質的にAGA治療薬は「以後の薄毛化プロセスを抑制しようとするもの」であって、「過去エラーを修復して取り戻せるもの」ではありません。このため、M字やO字がある程度明確に出来上がってきてからでは、その状態からの回復を目指すのは元々困難だという側面があります。
回復しているように見えるケースでも、まだ「毛根の有効再生可能回数」がしっかりと残っていた患者さまが治療薬の恩恵を受け始めたということに過ぎません。その場合でも、何度か「前倒し」させられてしまった毛根の再生プロセスを取り戻せているわけではなく、過去に短縮させられた「成長期」を未来で再利用できているわけでもありません。単純にまだ「命の回数券」が残っていたから、何とかそれ以後の毛髪で本来リズムのヘアサイクルに戻れただけです。
よって、鏡を見て根拠なく「まだ大丈夫…」と言い聞かせるのは何の意味もありません(実際のところどんどんと回復できる可能性を狭めている可能性さえあります)。「AGAになるとヘアサイクルが短くなること」を理解している人は多いですが、その中で「上述のような有効再生可能回数の限界点」を把握できている人はおそらく一握りでしょう。
そして、この知識の欠如によって「治療着手の遅れ」がもたらされやすくなっており、「治療薬を飲んでも一向に良くならない…」という状況を引き起こしやすくなっています。
AGA治療薬の効果実感は概ね6ヶ月後…
AGA治療薬服用後は、今既にDHTの影響を受けている毛が一旦「脱毛」という形で抜け落ち、その後に新しく芽生えた毛髪がDHTの影響を受けない環境下で成長し始めます。既に影響を受けてしまった「成長期」の毛が「退行期」から「休止期」へと進み、それが抜け落ちて次の新しい芽生えが起こるまでには概ね半年程度の調整期間を要します。
よって、「AGA治療薬を飲み始めて半年経っても何の変化も感じられない…」ということであれば、残念ながらもう有効な再生回数を使い切ってしまっている公算が高くなります。このケースだと、それ以上AGA治療薬を飲み続けてもあまり大きな回復は見込めないでしょう…(半年程度飲んでみて効果を確認と言われるのはこういう理由です)。
この場合だと、希望にそぐわない形でも「現状」を死守するためにAGA治療薬を服用し続けるという「現状維持型」の治療スタンスになってしまいます(これでも徐々に薄くなっていく可能性はもちろんあります)。
M字くっきり症状:自毛植毛で「見た目の変化」なら狙える…
少しでもふさふさ感を取り戻したいということなら、もう再生が叶わないエリアで「自毛植毛」を選択するのが唯一の方法かもしれません。自毛植毛の場合だと、後頭部から採取した元の毛根の性質が受け継がれるため、植えこんだ毛そのものはDHTの影響を受けず太くたくましく育ちます。
自毛植毛はAGA症状を完治させるものではありませんが、たくさん植えれば植えた分だけ見た目をしっかりと変化させることは可能です(植えたものではない元々そこにあった毛髪が徐々に薄くなっていく可能性は残ります)。
M字くっきり症状:ミノキシジル外用薬だと期待薄…
プロペシアやザガーロが駄目なら…と、「ミノキシジルの外用薬(あるいは内服薬)」に思いを馳せるケースも考えられます。これについては、「血管拡張成分」を取り込んだところで、血流が良くなって毛根に栄養が流れやすくなるだけです。その毛根自体がもう再生させられる能力を失ってしまっていれば(テロメアが有効再生回数を使い切っているのであれば)、水路を広げても新しい芽生えが起こる確率は限りなくゼロに近いと言わざるを得ません(まだ、有効再生可能回数が残っている毛根については、少し太く育ちやすくなる可能性はあります)。
このようなことから、月並みな表現にはなりますが、「薄毛対策は正しいAGA治療薬で早期治療をスタートさせることがとてつもなく重要だ」とまとめられます(薄毛化への予防線としてミノキシジル外用薬を塗布することも、DHTの影響を受けているか?が不明瞭になるため、当サイトとしてはおススメしていません)。鏡を見ながら前頭部をかきあげてチェックしているのであれば、「フィナステリド」などの後発ジェネリック医薬品で安価に正確なAGA治療をスタートさせるべきというのが当サイトの考え方です。
AGA治療の早期着手はオンライン診療で♪
1日100円程度で治療できる時代
初期レベルから中等度の薄毛症状に効果的な「AGA治療薬(5α還元酵素阻害薬)」の費用は、後発ジェネリックの「フィナステリド」を選んだ場合だと5,000円程度/月です(治すのではなく抑え続けるので継続治療になります)。とことんまで治療コストを抑えるなら、オンライン診療の配送料込みで3,000円程度/月にまですることも可能です(ふくろうアイクリニックでシプラ社製=インド製薬会社の治療薬にすればこれを実現できます)。
比較的安価でおススメしやすい信頼性の高いクリニックとしては、「クリニックフォア(男性)」が挙げられ、こちらだとオンライン診療の定期配送で4,000円程度/月でまとめることができます。もちろん、お薬なので副作用(性機能や肝機能などへの影響)が生じる可能性もゼロではありません。ただ、一般的には深刻な影響が出る人は稀で、各クリニックでも厚生労働省で承認されている安全性の高い治療薬(フィナステリド錠)が処方されることが多いです(上記ふくろうアイクリニックの最も安価なシプラ社製フィンペシアについては厚生労働省の承認は出ていませんので、念のためご注意ください)。
市販の「発毛剤」は、実はAGA治療薬よりも値段が高い…
クリニック(専門医)に相談することを躊躇し、ドラッグストアなどに並ぶ「リアップ」や「スカルプD」などを手に取る人もおられると思います。相談することを少し恥ずかしく感じ、このような回避策を講じるのだとは思いますが、この種の「ミノキシジル成分含有の発毛剤」の相場は7,000円前後です。
更に言うと、これらは「AGA治療薬」ではなく、「壮年性脱毛症向けの発毛剤」なので、そもそも薄毛症状の原因に対してズレた処置になってしまう可能性もあります。当サイトとしては、ミノキシジル系の発毛剤を購入するくらいなら、「AGA治療薬」に切り替えた方が適材適所を実現できると考えています。そして、これこそが「後々の手遅れ」を回避する重要な選択になってくると判断しています。
各医療機関での相談は基本的に「無料カウンセリング」として実施されますし、副作用などのネガティブ面も案内されるのが通常です(もちろん質問も可能です)。当サイトでは色んなクリニックの情報をわかりやすくまとめていますので、ぜひうまくご活用いただき、「ふさ活」ライフにお役立てください。最後までご覧いただき、ありがとうございました。