Contents
ミネラルの一つ「亜鉛」
アミノ酸の再合成や酵素の活性化に貢献
髪にとっての重要度 | ![]() |
髪は「ケラチン」という種類のタンパク質であり、アミノ酸を再結合させて作り上げられます。食物等を摂取し、タンパク質を分解してアミノ酸が吸収され、取り出されたアミノ酸を使って身体の各器官や臓器などが作られる形になっています。
髪の毛に関しては、18種類のアミノ酸を集めて作られるものなのですが、実はこの再合成の際に「亜鉛」がアミノ酸の結合をサポートする役割を担っています。「亜鉛」があることでこのようなアミノ酸の再合成がスムーズに進み、必要なタンパク質が作られやすくなります。
「亜鉛」はアミノ酸再合成のために活躍する「潤滑油」のような役割を担うのですが、毛髪にフォーカスして考えるなら、「亜鉛」がないことには健やかな発毛を望みにくくなります。具体的には、亜鉛不足によって「抜け毛」や「切れ毛」を招きやすくなってきますので、普段から亜鉛を意識することは薄毛対策としても大切です。
「亜鉛」は生理機能の多くに関与
亜鉛は髪以外についても様々な影響を及ぼします。と言うのも、亜鉛には「酵素」反応を触媒するような働きがあり、体内で酵素の機能性を高めることに貢献します(300種類以上の酵素に関与すると言われています)。
たとえば、味覚の感度、皮膚の代謝、糖の代謝、性機能の保持、中枢神経など、生理機能の多くに関係しています。このようなことから、お肌の状態(皮膚疾患や乾燥のしやすさ)、傷の治り具合、味覚異常、爪の形や艶、男性であれば性欲の減退、また免疫力の低下で風邪の引きやすさなどにも影響します。
よって、端的にまとめると、「亜鉛」は毛髪を含め私たちの身体機能を正しく維持するためになくてはならないミネラルと結論付けられます。
「亜鉛」は現代社会では不足しがち
ミネラルの一つである「亜鉛」は、「タンパク質」とは異なり、現代の食生活では幾分不足しやすい傾向があります。その理由としては、亜鉛は体内では合成できない「必須ミネラル」であること、また身近な加工済み食品には十分な亜鉛が含まれていないこと、更には体内に摂り入れた場合にも吸収率が30%程度に過ぎず、「そもそも摂り入れられにくい性質があること」、などの理由があります。
また、加工食品に含まれる「食品添加物」が亜鉛の吸収を妨げてしまうケースがあったり、お酒を飲んだ際にはアルコール分解酵素に亜鉛が必要となり、飲酒が多い人の場合には「亜鉛」が残りにくくなってしまいます。
亜鉛が不足しやすい事情
- そもそも体内では合成できない(食品などから摂るしかない)
- 加工済食品には亜鉛があまり含まれていない
- 亜鉛の吸収率はわずか30%に過ぎず、栄養素として摂り入れにくい
- 食品添加物の中には、亜鉛の吸収を妨げてしまうものがある
- アルコール摂取量によって、亜鉛の排出量が上がってしまう
このように、亜鉛は総じてタンパク質とは少し異なる性質を帯びています。「偏りなく食卓を…」とそれなりに考えておられる場合でも、その人の傾向次第では慢性的に亜鉛が不足しがちになってしまうことも考えられます。髪にとって非常に大切な栄養素の割に、摂りこぼしやすいというあまり認知されていない性質もあるため、髪にとっての重要度(スターランク)はMAX「5.0」の設定とさせていただきました。
亜鉛の摂取量目安(推奨量)
1日の亜鉛摂取量の目安(推奨量)は、成人男性であれば11mg程度、成人女性の場合には8mg程度と案内されています(厚生労働省の公表データを参照)。

画像出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)P.367」
成人男性 (18~29歳) |
成人男性 (30~49歳) |
成人男性 (50~64歳) |
11mg /日 | 11mg /日 | 11mg /日 |
成人女性 (18~29歳) |
成人女性 (30~49歳) |
成人女性 (50~64歳) |
8mg /日 | 8mg /日 | 8mg /日 |
「1日に11mg(もしくは女性で8mg)を過不足なく摂取できるか?」については、次にご紹介する食材リストでご想像してみてください。それぞれ100g中の亜鉛含有量を示していますので、1日に推奨されている分量の亜鉛確保は意識していないとやや難しいことがおわかりいただけると思います。
注意)ただし、過剰摂取も良くない
補足としてご紹介しておきますが、不足しがちだからと言って亜鉛を摂り過ぎてしまうことも問題です。過剰摂取した場合には、次のような悪影響が出る場合もあるので、「亜鉛=発毛」という極端な回路を作って過剰摂取してしまわないようにご注意ください。
- 前立腺肥大のリスク
- 銅(ミネラルの一つ)の欠乏による貧血
- 免疫障害など
過剰摂取による悪影響は、たとえば「100gの亜鉛サプリを毎日摂取してしまうような形」で現実味を帯びてきます。先にご紹介した「日本人の食事摂取基準」の表において、1日の耐容上限量30g~45g(年齢や性別によって違う)が案内されています。不足しがちだからと言って、サプリなどで過剰摂取してしまわないことを頭の片隅に置いておいてください。
亜鉛を多く含む食品
亜鉛が豊富に含まれる食材としては、「生牡蠣」が有名です。よく知られているだけあって、亜鉛の含有量も他の食材に比べて飛び抜けています。ただし、やや高価な食材なので日常的に食卓に並べるのは無理がありますし、中には苦手な方もおられるでしょう。生牡蠣ほど含有量が高くはないものの、それなりに亜鉛を多く含んでいる食材もありますので、それらを覚えておきながらうまく献立に加えると良いでしょう。
海からの恵みには「亜鉛」が多く含まれている
概して、海からの恵みは「亜鉛」を多く含む傾向があります。魚介類では「ほや」「カニ」「干しエビ」「たらこ」など、魚類では「煮干し」「ウナギ」「鰹節」などにも豊富です。海藻系では「味付け海苔」「ひじき」「ワカメ」などにも含まれます。
魚介類 | 食品100g中の含有量 |
生牡蠣 | 13.2mg |
ほや | 5.3mg |
カニ | 4.2mg |
干しエビ | 3.9mg |
たらこ | 3.8mg |
魚類 | 食品100g中の含有量 |
煮干し | 7.2mg |
鰹節 | 2.8mg |
ウナギ | 2.7mg |
海藻類 | 食品100g中の含有量 |
味付け海苔 | 3.7mg |
ひじき | 1.8mg |
ワカメ | 0.9mg |
肉であれば、赤みの強いものに「亜鉛」が多い
肉類では赤みの強いものが「亜鉛」を多く含む傾向があり、「豚レバー」、「牛モモ肉」、「鶏レバー」などが挙げられます。卵では「黄身」にも多く含まれており、乳製品だと「パルメサンチーズ」が秀でています。
肉類 | 食品100g中の含有量 |
豚レバー | 6.9mg |
牛ロース | 4.6mg |
牛ひき肉 | 4.3mg |
牛モモ肉 | 4.1mg |
鶏レバー | 3.3mg |
豚ひき肉 | 2.5mg |
鶏砂肝 | 2.8mg |
鶏はつ(心臓) | 2.3mg |
鶏モモ肉 | 2.0mg |
卵・乳製品 | 食品100g中の含有量 |
パルメサンチーズ | 7.3mg |
卵(卵黄) | 4.2mg |
「亜鉛」は野菜からだと摂りにくい、ナッツ類には多い
野菜やキノコ系だと「切り干し大根」、「かんぴょう」、「シソ」、「タケノコ」あたりに亜鉛が含まれ、ナッツ系のものは総じて含有量が高いです。豆類であれば、「油揚げ」や「納豆」などで比較的摂取しやすくなります。
野菜・きのこ類 | 食品100g中の含有量 |
干ししいたけ | 2.3mg |
切り干し大根 | 2.1mg |
かんぴょう | 1.8mg |
シソ | 1.3mg |
たけのこ | 1.2mg |
マッシュルーム缶 | 1.0mg |
トウモロコシ | 1.0mg |
まいたけ | 0.8mg |
アボカド | 0.7mg |
ほうれん草 | 0.7mg |
ニンニク | 0.7mg |
えのきだけ | 0.6mg |
木の実 | 食品100g中の含有量 |
カシューナッツ | 5.4mg |
バターピーナッツ | 3.1mg |
くるみ | 2.6mg |
豆類 | 食品100g中の含有量 |
きな粉 | 3.5mg |
油揚げ | 2.4mg |
納豆 | 1.9mg |
調味料 | 食品100g中の含有量 |
ゴマ | 5.9mg |
カレー粉 | 2.9mg |
亜鉛の含有量については、色々調べたところ以下のサイトが最もわかりやすいと感じました。「この食品はどうだろう?」と思った際は参考にして見てください(該当の食材がある場合、Ctrl+Fで立ち上がる小窓に食材名を打ち込むと、直ぐに含有量が確認できます)。
参考:簡単!栄養andカロリー計算 栄養計算(亜鉛の多い食品)
髪の大切な栄養素「亜鉛」のまとめ
不足しがちを少し意識しよう♪
当コラムでは、「亜鉛」の役割や効能に加え、亜鉛を多く含む食材などを具体的な数値でご紹介しました。食べ物を口にする時、亜鉛を意識することは普段ないと思いますが、髪や皮膚、臓器などの大部分は「タンパク質」でてきており、このタンパク質の結合に「亜鉛」は重要な役割を果たします。
ぜひ、代表的な食材(魚介類など)をインプットしていただき、幾分不足しがちな「亜鉛」に目を向ける意識を持っていただければと思います。「手っ取り早くサプリで…」という摂取方法では摂り過ぎてしまうケースも考えられますので、この点はくれぐれもご注意ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。当コラムが皆さまの「ふさ活」に少しでも貢献することを願っています。